日本小児精神神経学会第120回記念大会

●大会長挨拶

日本小児精神神経学会第120回記念大会
大会長あいさつ


 日本小児精神神経学会は、1959年(昭和34年)に開催された小児精神医学研究会を受け、1960年(昭和35年)に小児精神神経学研究会として発足し、1992年(平成4年)に日本小児精神神経学会となり現在に至ります。2008年(平成20年)に第100回大会を開催し、今回、第120回大会を迎えます。第100回大会では当時の学会理事長星加明德東京医科大学教授が大会長をされたことに倣い、この第120回大会も、理事長の宮本が大会長をさせていただくこととなりました。


 今回、大会の主テーマを『子どものトラウマ』といたしました。子ども虐待、いじめ、災害、事故、性被害、犯罪被害など、子どもたちは、心の傷、トラウマを生じうるさまざまな出来事に遭遇することがあります。トラウマと関連する心の問題では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)がよく知られています。一方、長期間繰り返されるトラウマを体験した子どもたちでは、PTSD状態に加え、身体機能、感情、注意、行動、対人関係などを状況に合わせて調整することが困難となりやすいことが報告されてきています(発達性トラウマ障害、van der Kolk、2005)。
子どもにおける感情や行動のコントロールの問題は、本人の意思や親のしつけの問題とされた時代から、発達障害との関連で見直されるようになりましたが、最近、トラウマとの関連性が注目されるようになってきました。特に、特別支援教育領域において、発達障害の観点だけでは理解しにくい子どもたちがいることへの気づきが高まっているように感じています。
 今後、子どもの心の問題の領域では、発達障害と同等、あるいは、それ以上にトラウマの問題が表面化し、多彩な分野が連携した対応が求められるようになっていくだろうと考えています。今回、大会テーマに「再認識されるべき心の問題」と副題をつけたのは、このような認識によります。


 子どものトラウマは、子ども虐待や災害と関連して述べられることは少なくありませんが、わが国では、子どものトラウマを学術集会の主題とした学会はほとんど見られず、今回の大会はその意味でも大きな意義がある学会となると考えております。子どもに関わるあらゆる職種の方々のご参加を心よりお待ちしております。


平成30年6月吉日

日本小児精神神経学会第120回記念大会 大会長 宮本信也
(日本小児精神神経学会理事長・白百合女子大学教授)