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演題名
『子どものトラウマインフォームドケアと治療
—発達過程におきるトラウマと関係性トラウマの影響という眼鏡をかけて子どもを診る—』 -
講 師
白川美也子先生(こころとからだ・光の花クリニック)
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講師のことば
演者は,若き日にパリのデイケアセンターを訪れる自閉症の子どもに対する精神分析的集団プレイセラピーに毎日従事していた時期がある.そのときに身についた身のこなしは,1998年に静岡県警の被害者対策アドバイザーを務め始め,犯罪被害を受けた幼児のトラウマに焦点をあてたプレイセラピーに従事するときに役立った.自閉症とトラウマを受けた子ども双方に必要な関わりのあり方はとても似ていたのである.これはなぜだろう?
時代の流れのなかで,子どものトラウマは再発見されつつある.レノア・テアのⅠ型とⅡ型トラウマの提唱は成人におけるPTSDや複雑性PTSDが子どもにあることを明示した.発達精神病理学が表れ,発達性トラウマ障害(van der Kolk)やDevelopmental Heterotopia of Traumaといった概念の提唱によって,トラウマの影響は,単にPTSDに限定されるのではなく,広範囲にわたる調節障害の多様な表れであることが理解されている.DBDマーチ(齊藤万比古先生)も,出世魚現象(杉山登志郎先生)もトラウマの影響として説明できるのである.
現在私の目に,子どもの呈する症状は,個体としては胎児期までも含む発達過程におけるトラウマ(単回性から慢性複雑性まで)と子どもの生得的な気質との複合の現れに,関係性という観点としては,養育者など重要な他者との関係性における適応や回復への試みの挫折の表れにみえる.
今回のセミナーでは,まず発達期におけるトラウマや関係性トラウマの影響を,①トラウマ記憶モデル,②3Fモデル,③アタッチメントパターンをトラウマの観点でみる,という3つのモデルで多層的に説明を試みる.
次に,子どものトラウマ治療としてのエビデンスが得られているEMDRとトラウマフォーカスト認知行動療法を紹介し,実際の回復例を提示する.
これらを通して,発達過程におきるトラウマと関係性トラウマの影響という眼鏡をかけて子どもを診ることの有効性と豊かさを伝えたい. -
<講師プロフィール>
精神科医,臨床心理士.
浜松医科大学卒業後,独立行政法人国立病院機構天竜病院小児神経科・精神科医長,浜松市精神保健福祉センター所長,国立精神・神経センター臨床研究基盤研究員,昭和大学精神医学教室特任助教,岩手県教育委員会招聘の東日本大震災における学校支援の経験等を経て,2013 年10月よりこころとからだ・光の花クリニック院長/スペース白い花主宰.日本トラウマティック・ストレス学会理事,日本EMDR学会理事,NPO法人女性の健康と安全のための支援教育センター理事,日本子どもの虐待防止学会代議員,IFCAメディカルディレクター.著書に「赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア」,共訳書に「DV・虐待にさらされた子どものトラウマを癒す」,「子どものトラウマと悲嘆のケア」,「トラウマフォーカスト認知行動療法」など -
日 時
2018年12月15日(土)9時30分 ~ 11時30分(受付開始9時予定)
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場 所
日本消防会館(ニッショーホール)(東京都港区虎ノ門2丁目9番16号)
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定 員
450名(予定)
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参加費
日本小児精神神経学会員は無料,非会員は2,000円
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申し込み
研修セミナー参加には事前参加登録が必要です.大会本体の事前参加申し込みとは別の手続きになりますのでご注意ください。
登録は民間のイベント集客支援サービス「こくちーずプロ」を利用して受け付けます.以下のアドレスより登録ください。
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